オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
・騎虎の勢い
「いやあ……こんなこと言うべきではないかもしれませんが、正直助かりました」
情報教室の一角で、ごちそうしてもらった菓子パンを食べ終わった私は首を傾げる。
「6月は高総体の引率がありますし、中間考査の問題も作らなければいけませんし、教育実習生も来るので、猫の手も借りたいくらいだったんです」
「コンコン見た目に反して容量悪くないのに? どうせまたお局に雑用押し付けられて断れなかったんでしょ」
「いやあ、ははは……」
ぼさぼさの黒髪を掻くコンコンは苦笑するだけで、挙句「教頭先生と呼ばなきゃダメですよ」なんて言ってくる。
そんなんだから生徒にも教師にもいいように扱われるのに。生徒の中じゃ人気の先生だけどさ。優しくて腰が低いから、結局ナメられちゃってるだけなんだよねえ……。
午前10時からおよそ2時間。
用意されたテンプレートに提出物の評価を打ち込んでいた私の隣で、コンコンは不具合が発生しているパソコン数台と格闘していた。
業者に頼めばいいものを、情報科教員でもあるコンコンにお局が直すよう指示したんだろう。
「本当に助かりました。今日は早く寝られそうです」
にこりと笑ったコンコンの涙ぐましい性格に、『なんでもしてあげたい!』と言ってくれる彼女が現れるといいなと思った。