オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「……俺んち、傘ないんすよね」
目を丸くさせたバンビ先輩の仕草でまた、波紋が広がる。
一度伏せられた瞳が、再び俺に向けられたときも。背もたれに使っていたはずのベッドに頭を乗せられたときも。次々と胸の奥で波紋が起き続けて。
「それは、困ったね……」
性に合わない俺の幼稚な駆け引きと同じくらい、少しも困っていないその表情と言葉のアンバランスさに、欲という欲がそそられた。
「雨が上がるまで帰れなくて、残念っすね」
返答を待つ必要がなかったのは、正面から覆い被さるように動いた俺が拒まれることはないと分かっていたから。
食らい付くようなキスをして、乱暴にしたくはないと頭の隅で思い、それでも互いの隙間は取っ払いたくて、ついばむようなキスを繰り返した。
触れ合うだけの唇がどちらのそれとも区別がつかなくなり、乱れる呼気の熱っぽさに体温も上がっていくようで。
「やだ、それ……っもう、」
胸元から顔を上げる。バンビ先輩は頬を染め涙ぐんでいた。かすかに口角を上げた俺は、
「悪い顔」
と指摘され、否定することなく微笑んだ。
「まあ、時間はあるんで。反応見ながら楽しむのも悪くないっすね」
「え……いや、それはちょっ、とぉ!?」
自分が立ち上がるのと一緒にバンビ先輩の腰を持ち上げ、ベッドへ放り投げる。
「いきなり何す……っ!」
放り出された彼女をまたがるように膝をつき、上着を脱ぎ捨てた。
起き上がろうとしていたバンビ先輩は目を白黒させている。
かと思えば顔を赤くし、眉間に可愛らしいシワを刻んだ。