オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

「なんすか?」

「っ別に、なんでも……」


顔を逸らしたバンビ先輩はまたすぐに視線をよこす。


「ていうか、テレビ、消して」

「ああ……はい」


色とりどりの光を放つテレビの電源を落とした。


意識していなかった分、先程よりも暗がりになった部屋は奇妙なくらい雨音に包まれる。


愛でるとバンビ先輩はときに、いやいやと首を振る。手の甲を口に当て、声をあげまいと我慢する。だけど体は反応するし、耐えきれず漏らす声は一段と高かった。


「先輩、可愛い。……つーかエロい」


言ったら蹴飛ばされるかと思ったのだが、我慢できずに告げてしまう。


するとバンビ先輩は怒るでもなく、不意の隙に息を整えながら俺を見上げ、襟足を撫でてきた。


「もっと見たくなった?」


挑発的な微笑みに欲情する。


恥ずかしがっていたくせに、開き直って対抗しようとするその負けん気は、俺が惚れる要因になったひとつだ。


可愛いだけじゃない。
ただ守られるだけの弱さは持っていない。


自分の武器を知っていても常に全てを剥き出しにすることはなく、いくつも隠し持っている。


無意識に、意図的に。あざとく、したたかに。


「そう訊いてくるってことは、もっと見せてくれるんすよね?」

「……見たいんでしょ?」


なんて口調だけは強気なそれを、一笑に付した。


だけど本当は、


「やめてって言っても、やめねーから」


抱いてるのは自分のはずなのに、もしかしたら俺の方が意のままに操られているんじゃないかと思っていたりもした。



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