オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
改めて思い返すと色々なことがありすぎて、まだ5月なことに驚く。
割れた窓ガラスが修理された廊下。処分通知が張り出された掲示板の前。自身に降りかかった不運に嘆いた昇降口を通り、ヤンキーコンビがたむろしていた校舎脇を尻目に、校舎裏で立ち止まる。
くるっと振り返った男子は緊張の面もちを向けてきた。
「あのっ! 俺、2週間前もここで高遠さんと話したんですけどっ」
「……はい。覚えてます」
言うことは決めていただろうに、「あー、えーっと、その……」としどろもどろになっている。
緊張で頭真っ白になっちゃったのかな。
そう考えると改めて、告白って勇気がいるんだなと思う。
告白だけじゃなくて、声を掛けたり、連絡してみたり、遊びに行こうって誘ったりすることも。
恋って実はいちばん、勇気を振り絞ることが多いのかもしれない。
「あの! 高遠さんが俺の隣を歩いてもいいって思えるようなプラン、考えてきました!」
ぱちくりと目を丸くさせる。
2週間もかけてプランを考えていたってことだよね。
これは、聞いたほうがいいの……? でも歩けないしな……。言い辛いけど、虎鉄のこと話したほうがいいよね。
「あの……私、その、色々あって彼氏ができて」
「え……?」
「あのときは男の人と距離置きたいって言ったのに、本当にごめんなさい」
「いやそんな……! 大丈夫です!」
ぺこりと下げた頭を上げると、彼は必死に両手を振っていた。