オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-


改めて思い返すと色々なことがありすぎて、まだ5月なことに驚く。


割れた窓ガラスが修理された廊下。処分通知が張り出された掲示板の前。自身に降りかかった不運に嘆いた昇降口を通り、ヤンキーコンビがたむろしていた校舎脇を尻目に、校舎裏で立ち止まる。


くるっと振り返った男子は緊張の面もちを向けてきた。


「あのっ! 俺、2週間前もここで高遠さんと話したんですけどっ」

「……はい。覚えてます」


言うことは決めていただろうに、「あー、えーっと、その……」としどろもどろになっている。


緊張で頭真っ白になっちゃったのかな。


そう考えると改めて、告白って勇気がいるんだなと思う。


告白だけじゃなくて、声を掛けたり、連絡してみたり、遊びに行こうって誘ったりすることも。


恋って実はいちばん、勇気を振り絞ることが多いのかもしれない。


「あの! 高遠さんが俺の隣を歩いてもいいって思えるようなプラン、考えてきました!」


ぱちくりと目を丸くさせる。


2週間もかけてプランを考えていたってことだよね。


これは、聞いたほうがいいの……? でも歩けないしな……。言い辛いけど、虎鉄のこと話したほうがいいよね。


「あの……私、その、色々あって彼氏ができて」

「え……?」

「あのときは男の人と距離置きたいって言ったのに、本当にごめんなさい」

「いやそんな……! 大丈夫です!」


ぺこりと下げた頭を上げると、彼は必死に両手を振っていた。
< 184 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop