オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「俺、付き合いたいとかそんな身の程知らずなこと思ってないんで大丈夫です! 中身より見た目重視なんで!」
「…………、えっ?」
「一度でいいから高遠さんみたいに可愛い子と並んで歩いてみたくて……っだから、お願いします!」
いやちょっと待って。前も交際を申し込んできたわけじゃなかったけど、つまりデートのお誘いってこと? 見た目重視って聞こえたけど、デートしたいってだけよね?
「私彼氏が、」
「ダメですか!? 1回だけでいいんです! 俺、高遠さん以上の子知らないし……っ本当に何もしません! 隣を歩いてくれるだけでいいんですっ。あと一緒に写真も!」
あ、違うねコレ。がっつり私の地雷踏んできたね。
「実は中学の同級生にめっちゃ可愛い彼女できたって見栄張っちゃって!」
いるよね~そういう人いるいる~なんて会話に花が咲くと思ったら大間違いだから。まだ彼女のフリしてくださいって言われたほうがマシだったから。
勇気を出してくれたことには変わりないんだろうけど、ちょっとじーんとした私の感動、利子付きで返して。
「お願いします!」
「ごめんなさい」
「高遠さんお願いします!!」
「ごめんなさい」
「一生のお願いです!!」
詰め寄ってきた彼に一歩後退したとき、びくりと体を跳ねさせた私を、すっかり覚えた香りが包み込んだ。
「人の彼女になんつー頼みごとしてんのや」
勢いよく後ずさった彼から斜め上に目をやると、息を切らした虎鉄が眉間に深いシワを刻んでいた。
「虎鉄……」
背後から私を抱きしめる腕に力が入る。