オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
途中で授業終了の鐘が鳴り、大人しくついて行った私たちは職員室の奥にある生徒指導室へ招き入れられた。
「えっと、ここ、座ってくださいね」
色褪せたソファーに促されたので、言う通りに腰掛ける。
「こ、こういう場合、何から話せばいいのやら」
コンコンの頭上に汗マークが飛んで見えるのは気のせいじゃないと思う。
自分より取り乱している人を見ると冷静になってくるのって、どうしてなんだろう……。
向かいの椅子に座ったコンコンは、胸ポケットから臙脂色の手帳を取り出した。それって生徒手帳、だよね。
「えぇっと……オリガクはですね、誰と誰が交際しようと口出しはしません。けれど、校則は一応ありますので、今一度確認しましょう」
私たちを発見したのがこの人で、心底良かった。
「まず、ここです。不純、読めますね? 異性、読めますよね? 交遊、禁止、と書いてありますよね」
「先生。私は不純からもっとも遠い人間です」
「ぶはっ! いや、ははっ。俺、校則とか読んだことねぇっす」
何を笑ってやがる。
ぎろりと虎鉄を睨むものの、効力はないに等しく。コンコンはよりいっそう汗マークを飛ばしている。
「何はともあれ、授業には出なければいけませんよ」
「ごめんなさい……」
眉を下げたまま隣の虎鉄に肘鉄を食らわせると、「すいませんっした」とぶっきらぼうな謝罪が続く。
「僕もあまり怒りたくないんだけれど……規則ですし、他の先生方に深く知られる前に、決めてしまいましょう」