オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
不思議に思って見ていれば、コンコンは棚からファイルを取り出して戻ってきた。
「なんすかそれ」
「教師用の校則といいますか……。こういう場合はこうしましょうっていう、マニュアルみたいなものです。問題児専用の」
「異議あり」
「あっ、違いますよ! 高遠さんが問題児と言っているわけではありませんからっ」
なら良し。それにしても、そんなものが存在するんだ? 確かにオリガクは隣の野獣とその仲間たちも含めて問題児が多いとは思うけど……【授業サボってイチャイチャしていた生徒を発見した場合】の指南まであるとは思えない。
「本当は使いたくないんですが、つい頼ってしまって……」
と情けない顔でファイルを開くコンコンに、まあひどいことにはならないよね、と答えが出るのを待った。
「うぅーん……厳重注意、で、いいかなぁ」
「処分中の身で何度ごじゃかれれば気ぃ済むのわ……?」
突然ぬうっとテーブルに落ちた影に、血の気が引いた。
……終わった。絶対、般若みたいな顔してる。閻魔大王も腰を抜かすに決まってる。
音もなく背後に立った大男の影に言葉を失い、コンコンでさえも青ざめる自分の背後へ、恐る恐る振り返る。
「叩ぎづげっと! 虎鉄ぅ!!」
「ひぎゃーーーー!!」
名指しされたのは虎鉄だったのに、あまりの恐怖に出た私の叫び声は、3階まで届いていた……らしい。
放課活動が終わった頃、私は懐かしささえ覚える大きなショックを受けた。