オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「そもそも教室の真ん前で起こったことなのに、なんでクラスメイトのあいだでも私が言い寄られてるって話になるのよ!」
「それは高遠が男に囲まれてたら自然と脳が判断しちゃうっていうかさー……。まあ今回は相手がトラとバクだったってこともあるだろうけど」
ね、とミヤテンがミーアに同意を求めたことに違和感を覚える。
昨日から予想外の連続で、些細なことまで気が回らなかったのかもしれない。
「ふたりともなんで、あの1年生がトラとバクだって知ってるの?」
私は昨日、名乗られるまで知らなかったというのに。ミーアもミヤテンも、最初からあのふたりをトラとバクって呼んでいた。
新入生が入学してきてから1ヵ月半。かっこいい子たちがいるって話は聞いたけど、そんな名前じゃなかったはず。
お互い顔を見合わせていたふたりは、『ミヤテンからどーぞ』ということになったらしい。
「俺は同中出身だから。つってもしゃべったことないから、向こうは知らないだろーけどね」
「うちはただ、今日みたいに掲示板で見て、小耳に挟んで知ってただけ」
もっとわかりやすく話してほしいと思ったところで、「早く席につけっ」とひとりの先生がぷんぷん怒りながら廊下を闊歩してくるのが見えた。
なんの相乗効果か、小言の多さで有名な先生を認識したことで、ふたりが言っていた意味を理解してしまう。
「やっぱりヤンキーじゃん!」
すでに教室へ入っていたふたりが同時に振り返る。