オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
ひらりひらりと空からお金が降ってくる。
素敵。とか思ってる場合じゃない。縦横無尽に落ちてくる1枚のお札から目を離しちゃダメ、絶対。
右に行ったり左に流されたり、前に踏み込まなきゃと思えば仰け反らされたり。
「わ、わ……ああっ!」
キャッチ! と伸ばした手を嘲笑うように風が吹き、千円札がすり抜けていく。
1メートル先へ落ちた千円札に、さながら獲物を前足で捕らえる動物のごとく飛び付き、ほっとする。
ていうか空中で取ろうとしなくても良かったのか。
千円札を持ちながら手についた砂を払う――と。
「っ、」
感じた気配に振り返った私は、見つけたふたりの男子生徒に肩を跳ねさせた。
今まで私が校舎裏にいたとすれば、彼らは校舎脇に腰掛けていたということになる。
来たときはいなかった。片方は見るからにヤンキーだし、嫌いな人種に気付かないわけがない。
あれだ。一服しに来たとか、絶対そんな感じだ……!
「ほら見ろ。だから言ったべや。告られてんの、ぜーったいバンビ先輩だって」
さっと顔を逸らした瞬間どちらかがそんなことを言うから、もう一度恐る恐る彼らに目をやってしまう。