オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
・我が道を往く
◆◆
「おほ……っおっフォォオオオオ!!!」
朝のSHRが終わった1年E組には『今日もか……』という空気が流れ始めた。
「バッ、バンビせんぱ……っ!? ぐっはーーー!!! マジ可愛いんですけどぉおおお!!!」
俺が送った写真を見て興奮するきゅうは、天に祈りを捧げるが如く床に膝をつけ、頭上にかざした携帯を仰ぎ見ている。そのまま背骨がバキッと折れろ。
「きゅうってバンビ先輩オタクっていうか、信者っていうか、キモイわー」
後ろの席にいるバクが頬杖をつきながらきゅうを見下ろす。椅子に座る俺は足元で携帯を仰ぎ見るきゅうに白い目を向けた。
「おい、きゅう。土下座しろ」
「サンキューなぁああ!!! トラァーーー!!!」
「あぶねえ!」
体当たりする勢いできゅうが抱きついてきて、ぞっとした。
「離れろ! お前、自分の車幅考えろ!」
肩を押し返せば、4月の身体測定で170センチを超えたきゅうは離れ、不満げな顔をする。
俺はきゅうより背が2センチ高いが、内心追いつかれるんじゃねぇかと密かにひやひやしていた。
「なんっだよ! 人がせっかく感謝してやってんのに!」
「俺は土下座しろって言ったんだよ」
「感謝で土下座っておかしいべや!」