オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
両手で頬を包みながらうんうん唸れば、ミーアが「なんなの?」と訝しむ。
「聞いてくれる!?」
「お金払ってくれるなら」
「虎鉄が今までに接したことのないタイプで戸惑ってるの!」
ミーアのセリフは聞かなかったことにして言い切る。
一応『相談所さえフリーダイヤルなのに?』という返しは準備していたけど、必要なかったらしい。
いつもみたいに鼻であしらわれることなく、哀れむように、ぽんと肩を叩かれる。
「うちが間違ってたよ。楓鹿を立ち直らせてくれるのは、歌でも映画でもなかったね」
「どうしたの急に……。ミーアの励まし方は拷問に近いなんて、今に始まったことじゃないけど?」
「そうだね。恋愛至上主義の楓鹿を失恋から立ち直らせるのは、新しい出会いだけだもんね」
思いも寄らなかった話題に、不覚にも足を止めてしまう。
新しい出会い……って、まさか。
「ありえない!」
出会いには違いなくとも、そこに意味を見い出すことは拒絶したかった。
ミーアの言い方はまるで、虎鉄とバクに出会ったことで失恋から立ち直ったみたいじゃん!
私のどこを見てそう判断できるの!?
「ミーアの目は節穴だっ!」
「うん、それでいいよ。気付かれてまた振り出しに戻ったら面倒だしねー」
「違うってば!」
「分かった分かった」
頭が混乱して、動揺して、私を置いて行ってしまうミーアを凝視する。
「振り出しに戻るって何!?」
必死に絞り出した叫びは、登校時のざわめきに同化した。