オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「なーに拗ねてんの。ミス・オリガクさん」
教室に着いても取り合ってくれなくなったミーアに口を尖らせていると、斜め前の席に登校してきたミヤテンが顔を覗いてきた。
「……気晴らしに髪をセットしてあげてもいいよ」
「ええ? まだハネてる? 寝坊して直す暇なくてさー」
赤みの強い茶髪に盛大な寝ぐせをつけているミヤテンは、無邪気に笑って私の足を背に床へあぐらを掻く。
鞄の中からヘアミストやワックスを取り出し、
「今日はどんな感じになさいますかー?」
「軽くイメチェンする感じでー」
なんてお互いふざけ合いながら、ミヤテンの短くて少し重めな髪型をいじる。
夢中になり始めたとき、ミーアが近くにやってきた。
「ミヤテン、あんたってチャレンジャー」
「んー。俺ってば超羨ましがられてる感じ?」
からからと笑うミヤテンは、クラスメイトの男子や、教室の前を通る男子の視線は全く気にしてないみたい。
「呑気ねー。あんたの髪を触ってるの、一応ミス・オリガクだよ?」
「一応!? 去年ミス候補を1年生にして全て押し退け断トツで優勝した正真正銘のミス・オリガクですけど!?」
「あははっ! 大丈夫、大丈夫。俺は高遠のこと可愛いマネキンくらいにしか思ってないから!」
「……うふっ。私もミヤテンのこと可愛いマスコットくらいにしか思ってないから大丈夫!」
「だよなー! あれなんか頭皮が痛い!」
「クセとってるんだよぉ」
うふふと笑いながら殺気を込め、ミヤテンの髪を根元からぎゅうっと握り締めた。