オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「はは。見て楓鹿。また囲まれてんじゃん」
昼休みに購買部へ行くと、ミヤテンが複数の男女とわいわい騒いでいた。今日は髪型が違うからひとしおだ。
ストレートにした髪を7対3に分けて、3の部分だけ耳に掛けさせ、7の部分はトップをふんわりさせてみた。
「いつもは無造作っていうか、毛先遊ばせてるもんねー。子犬が一気にインテリっぽくなった」
「ダテ眼鏡があれば完璧だったと思うの」
友達に髪を触られ、「やめろよーっ」と笑っているミヤテンが眼鏡を掛けていないことが悔やまれる。
「――あぁあのっ!」
すっと目線を上げる。私の前で飲み物を買っていた男子が振り返っていた。その両隣には、どこかだらしない表情の男子が立っている。3人が退かなければ自販機にお金を投入することも叶わない。
「私ですか?」
「はいあのっ、俺これ、間違って買っちゃって……!」
ペットボトルを2本持っていた彼が差し出したのは、私がいつも飲んでいるミネラルウォーターだった。
「間違ってねーだろっ」と茶々を入れる友人を見る限り、わざわざ買ってくれたらしい。
「うるせーって!」と赤面する彼は、緊張した面持ちで目を泳がせている。
「その、今買ったばっかなんで、良かったら……どーぞ!」
ずいっとさらに差し出してきた彼はかわいそうなくらい真っ赤になって、見つめてくる。