オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

どこからか「やるぅー」なんて声が聞こえ、隣ではミーアが存在を消そうと遠くを眺めている中、おずおずとペットボトルに手を添えた。


「ありがとう」


遠慮がちに微笑めば、彼はさらに顔を赤くして勢いよく頭を下げると、友達に肩を抱かれて騒がしく立ち去った。


周りからの視線が痛い。


「150円浮いた」


買うものがなくなったので、ミーアが飲み物を買うのを待つ。するとミーアは「いつものことじゃん」と、見慣れた光景であったことを口にする。


「にしてもあからさまなアプローチだったねー。今月で何人目よ。4人目?」

「んー」


気のない返事をしながら自販機に背を向ける。ぺキッとペットボトルのキャップを開けた音が、妙に耳についた。


「150円浮いたなら、今日こそかりんとう買ってよ」

「ええ……かりんとう180円なんですけど」

「キャラメル味」


あ……その真顔は、『おととい部活中のうちに迷惑掛けただろーが』って言ってますね。


「もー! 分かったよぉーっ」

「やった。お菓子ゲットー」


仰ぎがちに嘆いた私にミーアは笑い声をあげた。


でも、どうやら振り出しに戻ってしまったらしい私は、うまく笑えなかった。

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