オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「俺そういうの嫌いじゃないっすよー。かわされるよりは、正直に受け答えしてもらえたほうが嬉しいっすわ」
「てめぇはまどろっこいのが嫌なだけだろ」
「うわぁ。猪突猛進のトラには言われたくねー」
「喧嘩売ってんのか」
ピシャーン!とまたふたりのあいだに落雷した気がする。
私を挟んで喧嘩するのはやめてほしいんですが……。
「先輩は?」
「へ?」
「バンビ先輩もまどろっこいのは嫌っすよねぇ?」
どうして私に訊く!?
左右から催促するような眼差しを向けられ、戸惑いながらも口を開く。
「時と場合によるけど……基本的には嫌、かな」
「ですよねー! バンビ先輩っすもんね!」
どういう意味よ、と言ったところで返ってくる言葉に窮するように思えた。
だから先に言い訳をと思ったわけじゃないのに、
「これでも昔は謙遜してたんだよ」
気付けば口に出していた。
昔から褒め言葉も好意による言葉も、素直に受け止めていたわけじゃない。
『可愛いね』って言われれば『そんなことないよ』って返していた。『モテるでしょ』って言われれば『モテないよ』って返していた。
「でも小学4年生の夏休み前だったかなぁ。女子のあいだで『抜け駆けはなしだよ』って言われてたクラスの人気者に、告白されたんだよね」
あれは肝を冷やした。
クラス内も雪国かってくらい寒い緊張感に包まれていた。告白を断っても、女子の視線は冷たかったのを覚えている。