オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

『また楓鹿ちゃん?』『仕方ないよ』『可愛いもんね~』


何気ない一言で、悪気があったわけじゃないと思う。


「それでも私は『可愛くないよ、モテないよ』って言ってたんだけど、『いやもう謙遜とかホントいらないから』っていう空気が流れちゃってねー」

「先輩は悪くないっすよね、それ」


虎鉄を見ると真面目な顔をしていて、思わず苦笑が漏れた。


「そうだとしても当時の私はさ、仲間はずれは嫌だなぁとか、嫌われたくないなぁって思ってたから」


正直なところ面倒だと感じたこともあるし、私にどうしろっていうんだ!と思ったこともある。


なら認めちゃえば早いんじゃない!?って短絡的な考えに至ったのが、小学生だったことを踏まえても自分らしい。


今ほど流暢に受け答えはできなかったけど、当時はそれでずいぶん気が楽になった。


「まあそういうことが何回かあってさ、褒められたら『ありがとう』って言うことにしたんだよね」

「そしてバンビ先輩は掛けられる言葉に含まれているのが羨望だろうと嫉妬だろうと全て受け入れ、否定せずにいたら『可愛いけど変な子』になったのでした」

「バク……あんたやっぱりバカにしてるでしょ」

「事実をナレーションしただけじゃないっすか」

「私は変な子じゃない!」


ぷっと軽く吹き出した虎鉄が信じられない。


睨むと、虎鉄はごほんと咳払いをして椅子を拭き始める。


ごまかせると思うなよ……? じいっと視線を注げば、虎鉄は諦めたように私と目をかち合わせた。
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