オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

こんなの幸せじゃない。別れた男にいつまでも気分を左右される自分とさよならしたい。


切り替えは早い方だし、別れを切り出されたのだって初めてじゃないんだから、とっとと忘れたいんだよ。


でも、『なんか飽きた』って。

2週間足らずで『新しい彼女』って。


乗り換えただけだよね!?って疑うじゃん。


心変わりか二股か知らないけど、喧嘩する前から彼女の私が1番じゃなくなってたってことじゃん。


会うたび、可愛いって。自慢したいって言ったくせに。


私って本当、好かれる部分が見た目しかないみたいで。



ビーッ!とデジタイマーのブザー音が体育館に響き、少しだけ顔を上げる。


「――んえっ!?」


ぐっと腹部に圧迫感が襲い、急にうしろへ引っ張られたと思ったら上へ持ち上げられた。


目線の先にはステージ脇に畳まれた臙脂色のカーテンと、バクの頭頂部らしきもの。


何……っ何事!? えっ!? 私なんで立ってるの!?


背中に感じる人の気配。腹部に回された両手。事態を把握しようと廻らせた思考の先に浮かぶ人物は、ただひとり。


「ちょっと……っ虎鉄!? 何!?」

「いや、なんか土下座でもしそうな俯き具合だったんで、とりあえず起こしたほうがいいかなと」

「……っ余計なお世話! ていうか声掛けるとか他に方法あるでしょ!?」


これじゃあ後ろから抱きつかれてるみたいじゃない!


「まあそうなんすけど。また機嫌損ねて、パイプ椅子とか投げられちゃ堪ったもんじゃねぇなって」


そんな腕力あるかっ!
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