オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「温泉、好きだろ」
頭を少し後ろに倒した李堵先輩が思い返すように目を細め、ぞっとした。ぶわっと全身に鳥肌まで立ったから、
「気色悪い!!」
と溜めに溜めた率直な感想を吐き出してしまった。
「ありえない! 本当に心の底から気持ち悪い! ゴキブリに遭遇したレベルで無理!!」
むしろGが一直線に飛んできたってくらい無理! それもうただの恐怖だけど! つまり私はそれだけ李堵という男が嫌いってことだから良し!
「遊びたいなら他の子誘ってください失礼しますっ!」
口早に言い切った私は掴まれていた手を振り払い、寒イボが立った腕をさすりながらその場をあとにする。
うああああもう本当やだ! なんで、あんな人に――…。
項を垂らす私は誰かに衝突し、急いで振り仰ぐ。
「ごめんなさい! よそ見して、て……」
え。なぜ真っ赤なの。
羽織ってるブルゾンよりも顔が赤いんじゃない?
「あの、ごめんね?」
あどけなさが残る顔に1年生だと判断し謝るも、応えてくれない。明るいピンクブラウンのショートカットの下から、じっと、赤面したまま私を見つめてくる。
思わず小首を傾げたとき、目の前から「ふぉうっ」と奇妙な声が届いた。
「しゃ、しゃべ……うごっ、動い……っはあ、」
「…………」
息が荒いな。私を前にして赤面って、緊張でしゃべれないってことよね、たぶん。