オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
「言われた通り連絡先も写真も手に入れたってのに、バンビ先輩にすらお返ししねえって、おかしいと思わねーのわ?」
「……まあ、一言くらい礼は言っとけと思わなくもねえ」
「ほらなー! まず自分で動けってんだよ。体ばっかでかくて、肝が小せぇったらねえわ」
バクに視線を注がれたきゅうちゃんは顔の半分をタブレットで隠し、また目を伏せていた。きつく眉を寄せて、心なしか背も丸まっているように見える。
……なんか、ヤな感じ。この3人ってどういう関係? きゅうちゃんも幼なじみなのかな。
「憧れるとか言って、髪も伸ばさないし化粧もしないし、すぐ手ぇ出すしよー。日に日に女からかけ離れてどうすんだよ」
あー……なんか私、今、笑顔かも。
「きゅうが女らしくとか似合わないけど、死ぬほど頑張ればどうにかなるかもしんねぇべや」
本心から言ってるとは思えないバクが、無邪気な笑顔を向けてくる。
「ね! バンビ先輩もそう思うっすよね!」
にこっと笑みをたたえた私はのそれは、同意じゃない。
「ほらきゅう、頭下げろって。こんなチャンス二度とないかもしれねーぞっ」
俯いたきゅうちゃんからタブレットを引ったくる。その勢いを殺すことなく、バク目掛けて振り上げた。
「うあっぶね!」
「なんで避けるの!?」
「ふつう避けますわ! アゴ狙うとか危険っすわバンビ先輩っ!」
「バクあんた、悪ふざけも大概にしなさいよっ!」
幼なじみだかクラスメイトだか知らないけど、言っていいことと悪いことがあるでしょうが!