オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-
しゃがみ込んでテーブルの裏を確認する。表同様に白い塗装はされているが、感触はプラスチックではなく木のそれだ。
「あー……端のほう、ささくれてますね。ここに手ぇかけたんじゃ切れる……ってその血なんすか!」
立ち上がった俺の視界に、数秒前より流血しているバンビ先輩の指が飛び込んでくる。
絆創膏でも貼っときゃいいと思ったが、無理くせえな。
先輩の手首を引き、バクを呼ぶ。
「保健室に先輩連れてくからお前この辺どうにかしとけ」
「はあああ!? またトラだけおいしい思いですか! 俺はのけ者ですか!」
「ちょっと虎鉄っ、これくらい大丈夫だから! 絆創膏持ってるし!」
「傷残ったらどーすんのやっ」
振り返るとバンビ先輩は丸くさせた目を泳がせたから、強く手を引く。
「この礼はしてもらうからなー」
恨めしげに言ったバクは放置し、保健室へ向かった。
「やあ、楓鹿。今日もとびきり可愛いね」
なんだこの鼻につく野郎は。
保健室に入るなり、くるりと椅子に座ったまま見向いた校医は一瞬驚いたかと思えば、首を傾げて微笑んだ。
バンビ先輩は「アハハハ」と棒読みで笑っている。
「先輩、ささくれてる木のテーブルで指切ったんすけど」
「それは痛いね。おいで楓鹿。木くずが刺さってないか診てあげる」
いきなり虫眼鏡取り出したけど、25歳くらいじゃねえのか。大丈夫か、視力含めて諸々。