オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

「ぎゃっは! トラお前、自分勝手ですか! 王様ですか! バンビ先輩絶句してますからっ!」

「てめぇは黙って――」


ズドンッ! と、足の甲を思いっきり踏みつけられた。あまりに不意打ちで、かつ威力があったせいか痛みに悶えるも、声までは出ず。


「~っ急になんっすか!」


無理やり痛みを堪えて言うと、なぜかバンビ先輩はきつく睨んでくる。


「ああいうのは褒めてるって言わないの! 虎鉄のくせに無自覚とか、ほんっとタチ悪い!」

「はあ!?」


掃除に戻ろうとするバンビ先輩の背中を凝視する。


くせにって聞き捨てならねえんだけど、俺のどこらへんが無自覚だよ! まずバンビ先輩にだけは言われたくねえ!


「先輩すぐ足出し過ぎじゃないっすか!?」


言われっぱなしは癪だと言い返せば、振り返ったバンビ先輩は目に角を立てた。


「舌先三寸のやつに言われたくないわよ! お口のチャック買ってきたほうがいいんじゃない!?」


吐き捨てるように言い切ったバンビ先輩は、ひとりで掃除を再開する。色んな意味で面食らってばかりだ。


「おいバク。舌先三寸ってどういう意味だ」

「さ~。口先だけとか、そういう意味なんでねぇの」


なんだそれ。上辺だけとか、有言実行できてねえって意味か? 俺に頼ってる風な態度をとって、守られていた人がそれを言うのか? 不満しかねえぞ。


「俺のどこが口先だけなんだよ」

「あれだべ? バンビ先輩って俺らのこと妙に年下扱いしてっから、後輩にからかわれてるとか思ってんだべ?」
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