七夕の出逢い
新しい家族 01話 Side 真白
「少し寒いけどいい天気……」
私は司と涼さんを送り出し、リビングから間続きになっているウッドデッキでお茶を飲んでいた。
お庭には先日降り積もった雪がまだ残っている。
ガーデンテーブルにはティーポットとカップ、それから司と涼さんの予定のみが書き込まれたカレンダー。
司は今年中等部三年、楓はあと一年で大学を卒業、湊は社会人。
すでに湊と楓は家を出て一人暮らしをしている。
司はあと四年、長くても五年経てば湊たちと同様、支倉で一人暮らしを始めるだろう。
しかし、留学という選択肢が加わった今ではそれも定かではない。
「……寂しくなるわね」
私の言葉は庭の草木にしか届かない。
子どもたちが成長するのは嬉しいけれど、成長すると共に、一緒に過ごす時間が少なくなることが玉に瑕。
自分でもわかっているのだ。
自分の世界が狭いことなど……。
けれど、知っていても外へ出ようとは思わない。思えない――
今の生活に不満があるわけではないけれど、変化を求めている自分もいた。
「おかしいわ……。今まで変化なんて求めたことなかったのに」
ただ平穏な日々を求めていた学生時代。
涼さんと出逢って、私の世界はとても色鮮やかな日々に変わった。
そして、子どもたちが生まれてからは新しい発見のある日々を送ってきた。
この先だって子どもたちの成長を見ることはできるだろう。
けれども、如実に距離が開き始めるのも事実。
子どもが手を離れて何もない人間になるのはいやだけど、今のままでは間違いなく何もない人間になってしまうだろう。
趣味は人並みに持っている。
でも今は、それとは別のものを求めている気がした。
考え続けたら「何か」は明確になるだろうか……。
考え続けたら――
翌週、ふと思い立ち、子どもたちが小さかったときに使っていたものがしまってあるクローゼットを開いた。
おもちゃなどは残していないものの、お絵描き帳からスケッチブックはすべて残してある。
子ども三人のお絵描き帳は三者三様。
湊は風景画を描くことが多く、楓は人物画を描くことが多かった。
そして司は、動物の絵ばかりを描いていた。
幼稚部の遠足で動物園に行ったことを今でも鮮明に思い出せる。
周りの子たちが騒ぐ中、司はひとり静かだった。
自分のリュックからお絵描き帳を取り出しクレヨンを手に取ると、黙々と動物を描き始めた。
その日だけではすべての動物を見て回ることができず、とても名残惜しそうな顔をしていたのを覚えている。
物事に執着することのなかった司が帰りのバスの中で、
「お母さん、また動物園に行きたい」
真っ直ぐな目に請われ、次の日曜日には涼さんと私と司の三人で動物園へ出かけた。
その日もすべての動物を見て回ることはなく、ひとつひとつの動物を一生懸命お絵描き帳に描いていた。
八回目の訪問でようやくすべての動物を見て回ることができ、九回目には犬や猫、ウサギ、インコといった触れることのできる動物に執心していた。
司は年頃の子が好む乗り物のおもちゃよりも何よりも、動物が好きだったのだ。
「懐かしい……」
動物を見るとき、動物を相手にするときだけ、司の表情に変化が見られる。
そんな司を見たくて、私も涼さんも熱心に動物園へ通ったものだ。
「家に動物がいたらどんな反応をするかしら……?」
そんな思い付きがひとつのきっかけとなった。
その日の夜、寝る間際にベッドの中で涼さんに相談してみた。
「涼さん」
「なんでしょう?」
「動物を飼いたいとお願いしたら聞いていただけますか?」
「……動物、ですか?」
「はい、動物です」
涼さんは不意をつかれたような表情でメガネを外した。
私の隣に横になり、優しい眼差しを向けられる。
「なんの動物でしょう?」
「おうちで飼える動物だと――犬、猫、鳥、ウサギあたりでしょうか?」
「……真白さんはそんなに動物がお好きでしたか?」
「動物は好きです。でも、飼いたいと思ったことはありませんでした」
「ではなぜ……?」
当然すぎる質問に、正直な理由を口にする。
「……少し変化が欲しくなったみたいです」
「変化、ですか?」
「はい……。子どもが小さいころは家にいてもたくさんの発見があって、日々目まぐるしく過ごしていたのですが、子どもがある程度大きくなると、やることがなくなってしまうものなんですね」
「……寂しいから、その穴埋めを動物に求めていらっしゃる?」
「……否定はしません」
「潔いですね」
涼さんは目を細め穏やかに笑った。
「そういうわけではないのですが……。だめですか?」
「では、飼う動物を決めなくてはいけませんね」
「あの、実はもうひとつお願いがあります」
「なんでしょう?」
「動物は、司に選ばせたくて……」
「……目的はそちらでしたか?」
涼さんはうかがうような視線を向けてくる。
「どうでしょう? 自分が寂しくなるから、という理由は間違いなくあるんです。でも……今日、あの子たちが小さいころに描いていたお絵描き帳を見て思い出してしまって」
クスリと笑うと涼さんも笑った。
「よくも毎週毎週動物園へ通ったものです。司は覚えているでしょうか?」
「どうでしょう? でも、初等部では動物の飼育に熱心というコメントを多々いただきました。中等部には動物がおりませんので、少し寂しいのではないかと……」
「おや、真白さんと同じ、寂しいつながりですね?」
ほんの少し皮肉じみた言い方だった。
「……涼さんの意地悪」
「そうでしたか?」
嘘……涼さんの眼差しはとても優しい。
いつも優しく私を包んでくれる。
それは何年経っても変わることはない。
「それでは、あの捻くれ者からどうやって希望を訊き出しましょうか」
「ご自分の子どもなのに捻くれ者だなんて……」
「ですが、あれは十二分に捻くれていると思いますよ? 実に私の子どもらしい」
確かに司は少し変わっている。
湊や楓が司くらいのときはもっと言葉数も多かったし、もう少し年相応だった。
けれども司はどこか落ち着きすぎていて、言葉数も少ない。
年でいうなら海斗くんが最も近いけれど、司が従兄弟の中で一番仲がいいのは楓と同い年の秋斗くん。
学校でもクラスにあまり馴染んでいない、という話は担任の先生からうかがっている。
けど、それ自体は幼稚部、初等部のときからずっと言われ続けていることでもあり、今に始まったわけではない。
「動物が家に来たら少しは変わると思いますか?」
「どうでしょうね……。そのあたりはなんとも自信がありません」
「涼さんったら……。明日、司に訊いてみます」
「なんと?」
「動物を飼うとしたら何がいい? って」
「直球ですね?」
「司相手には直球が一番いい気がします」
「……覚えておきましょう」
翌日の夕飯時――
「司、もし動物を飼うとしたら何がいい?」
「は?」
「司は動物を飼うとしたら何を飼いたい?」
私がたずねているにも関わらず、司は涼さんの方を向く。
「……父さん、これ、なんの質問?」
「司はいつから日本語を理解できなくなったんだ?」
涼さんはさも不思議そうな顔でたずねた。
すると司は、ひとつため息をつき、
「俺の言い方が悪かった。何がどうしてこんな質問をされてるのかを知りたいんだけど」
「あら、純粋な好奇心よ?」
「それ、父さんも絡んでるの?」
「それはどうだろう?」
涼さんがとぼけて見せると、司の表情はいっそう険しくなる。
「動物、飼うの?」
「まだ決めてはいないわ」
「ふーん……動物飼うなら飼育方法をちゃんと心得てからのほうがいいと思うけど」
そう言って司は黙った。
けれども、本音は違ったのかもしれない。
翌日にはネットでオーダーしたであろう本が届いたのだ。
届いた本は、犬と猫の飼育方法が書かれたもの。
きっとそれらが司の選択肢にあがったのだろう。
考えてみれば、ウサギと鳥は初等部の飼育広場にいるけれど、犬や猫はいない。
自分が飼育したことのない動物を選択するあたりが司らしいと思えた。
その週の土曜日、「これ」と司に本を渡された。
本は二冊、犬と猫の本だ。
「俺はどっちでもいい。家にいて一緒にいる時間が長いのは母さんだから、母さんが決めたほうがいいと思う」
そうは言うものの、付箋の数が歴然としている。
司の関心は犬に向けられていた。
司が家を出てから涼さんがくつくつと笑いだす。
「司は素直なのか捻くれているのかわかりませんね」
「そうですか? 私はとても優しい子だと思います」
言いながら、付箋がたくさんつけられた本を開く。
基本的な飼育方法に加え、犬種や重量によって異なるそれぞれのポイントにも事細かに付箋やアンダーラインが引かれていた。
犬は大きさによってご飯の量も違えば必要とされる運動量も異なるらしい。そして、大きな犬になればなるほどリードを引く強さも強くなる。
それらを司が考慮した結果、小型犬がいいのではないか、という問いかけが余白部分に書きこまれていた。
「ふふ……」
「なんですか?」
「やっぱり優しい子です。ただ、少し不器用なだけ……」
私は涼さんに開いた本を渡す。
「……朝は無理だけど、夕方の散歩は俺が行く……?」
「えぇ。ほかにも……」
そのページの下の方を指差すと、涼さんは司の書きこんだものを読んで目を細めた。
「そうですね。どうにも不器用なところが玉に瑕ですが」
「でもきっと……そんな不器用な司に気づいてくれる子もいるはずです」
「だといいのですが、なかなかハードルが高いようにも思えます。……真白さん、今日は出かけましょうか」
「どちらへ?」
「ペットショップへ」
涼さんはにこりと笑んだ。
「嬉しいですっ!」
「朝食の片付けは私が引き受けましょう。真白さんは出かける支度をしてきてください」
私は司と涼さんを送り出し、リビングから間続きになっているウッドデッキでお茶を飲んでいた。
お庭には先日降り積もった雪がまだ残っている。
ガーデンテーブルにはティーポットとカップ、それから司と涼さんの予定のみが書き込まれたカレンダー。
司は今年中等部三年、楓はあと一年で大学を卒業、湊は社会人。
すでに湊と楓は家を出て一人暮らしをしている。
司はあと四年、長くても五年経てば湊たちと同様、支倉で一人暮らしを始めるだろう。
しかし、留学という選択肢が加わった今ではそれも定かではない。
「……寂しくなるわね」
私の言葉は庭の草木にしか届かない。
子どもたちが成長するのは嬉しいけれど、成長すると共に、一緒に過ごす時間が少なくなることが玉に瑕。
自分でもわかっているのだ。
自分の世界が狭いことなど……。
けれど、知っていても外へ出ようとは思わない。思えない――
今の生活に不満があるわけではないけれど、変化を求めている自分もいた。
「おかしいわ……。今まで変化なんて求めたことなかったのに」
ただ平穏な日々を求めていた学生時代。
涼さんと出逢って、私の世界はとても色鮮やかな日々に変わった。
そして、子どもたちが生まれてからは新しい発見のある日々を送ってきた。
この先だって子どもたちの成長を見ることはできるだろう。
けれども、如実に距離が開き始めるのも事実。
子どもが手を離れて何もない人間になるのはいやだけど、今のままでは間違いなく何もない人間になってしまうだろう。
趣味は人並みに持っている。
でも今は、それとは別のものを求めている気がした。
考え続けたら「何か」は明確になるだろうか……。
考え続けたら――
翌週、ふと思い立ち、子どもたちが小さかったときに使っていたものがしまってあるクローゼットを開いた。
おもちゃなどは残していないものの、お絵描き帳からスケッチブックはすべて残してある。
子ども三人のお絵描き帳は三者三様。
湊は風景画を描くことが多く、楓は人物画を描くことが多かった。
そして司は、動物の絵ばかりを描いていた。
幼稚部の遠足で動物園に行ったことを今でも鮮明に思い出せる。
周りの子たちが騒ぐ中、司はひとり静かだった。
自分のリュックからお絵描き帳を取り出しクレヨンを手に取ると、黙々と動物を描き始めた。
その日だけではすべての動物を見て回ることができず、とても名残惜しそうな顔をしていたのを覚えている。
物事に執着することのなかった司が帰りのバスの中で、
「お母さん、また動物園に行きたい」
真っ直ぐな目に請われ、次の日曜日には涼さんと私と司の三人で動物園へ出かけた。
その日もすべての動物を見て回ることはなく、ひとつひとつの動物を一生懸命お絵描き帳に描いていた。
八回目の訪問でようやくすべての動物を見て回ることができ、九回目には犬や猫、ウサギ、インコといった触れることのできる動物に執心していた。
司は年頃の子が好む乗り物のおもちゃよりも何よりも、動物が好きだったのだ。
「懐かしい……」
動物を見るとき、動物を相手にするときだけ、司の表情に変化が見られる。
そんな司を見たくて、私も涼さんも熱心に動物園へ通ったものだ。
「家に動物がいたらどんな反応をするかしら……?」
そんな思い付きがひとつのきっかけとなった。
その日の夜、寝る間際にベッドの中で涼さんに相談してみた。
「涼さん」
「なんでしょう?」
「動物を飼いたいとお願いしたら聞いていただけますか?」
「……動物、ですか?」
「はい、動物です」
涼さんは不意をつかれたような表情でメガネを外した。
私の隣に横になり、優しい眼差しを向けられる。
「なんの動物でしょう?」
「おうちで飼える動物だと――犬、猫、鳥、ウサギあたりでしょうか?」
「……真白さんはそんなに動物がお好きでしたか?」
「動物は好きです。でも、飼いたいと思ったことはありませんでした」
「ではなぜ……?」
当然すぎる質問に、正直な理由を口にする。
「……少し変化が欲しくなったみたいです」
「変化、ですか?」
「はい……。子どもが小さいころは家にいてもたくさんの発見があって、日々目まぐるしく過ごしていたのですが、子どもがある程度大きくなると、やることがなくなってしまうものなんですね」
「……寂しいから、その穴埋めを動物に求めていらっしゃる?」
「……否定はしません」
「潔いですね」
涼さんは目を細め穏やかに笑った。
「そういうわけではないのですが……。だめですか?」
「では、飼う動物を決めなくてはいけませんね」
「あの、実はもうひとつお願いがあります」
「なんでしょう?」
「動物は、司に選ばせたくて……」
「……目的はそちらでしたか?」
涼さんはうかがうような視線を向けてくる。
「どうでしょう? 自分が寂しくなるから、という理由は間違いなくあるんです。でも……今日、あの子たちが小さいころに描いていたお絵描き帳を見て思い出してしまって」
クスリと笑うと涼さんも笑った。
「よくも毎週毎週動物園へ通ったものです。司は覚えているでしょうか?」
「どうでしょう? でも、初等部では動物の飼育に熱心というコメントを多々いただきました。中等部には動物がおりませんので、少し寂しいのではないかと……」
「おや、真白さんと同じ、寂しいつながりですね?」
ほんの少し皮肉じみた言い方だった。
「……涼さんの意地悪」
「そうでしたか?」
嘘……涼さんの眼差しはとても優しい。
いつも優しく私を包んでくれる。
それは何年経っても変わることはない。
「それでは、あの捻くれ者からどうやって希望を訊き出しましょうか」
「ご自分の子どもなのに捻くれ者だなんて……」
「ですが、あれは十二分に捻くれていると思いますよ? 実に私の子どもらしい」
確かに司は少し変わっている。
湊や楓が司くらいのときはもっと言葉数も多かったし、もう少し年相応だった。
けれども司はどこか落ち着きすぎていて、言葉数も少ない。
年でいうなら海斗くんが最も近いけれど、司が従兄弟の中で一番仲がいいのは楓と同い年の秋斗くん。
学校でもクラスにあまり馴染んでいない、という話は担任の先生からうかがっている。
けど、それ自体は幼稚部、初等部のときからずっと言われ続けていることでもあり、今に始まったわけではない。
「動物が家に来たら少しは変わると思いますか?」
「どうでしょうね……。そのあたりはなんとも自信がありません」
「涼さんったら……。明日、司に訊いてみます」
「なんと?」
「動物を飼うとしたら何がいい? って」
「直球ですね?」
「司相手には直球が一番いい気がします」
「……覚えておきましょう」
翌日の夕飯時――
「司、もし動物を飼うとしたら何がいい?」
「は?」
「司は動物を飼うとしたら何を飼いたい?」
私がたずねているにも関わらず、司は涼さんの方を向く。
「……父さん、これ、なんの質問?」
「司はいつから日本語を理解できなくなったんだ?」
涼さんはさも不思議そうな顔でたずねた。
すると司は、ひとつため息をつき、
「俺の言い方が悪かった。何がどうしてこんな質問をされてるのかを知りたいんだけど」
「あら、純粋な好奇心よ?」
「それ、父さんも絡んでるの?」
「それはどうだろう?」
涼さんがとぼけて見せると、司の表情はいっそう険しくなる。
「動物、飼うの?」
「まだ決めてはいないわ」
「ふーん……動物飼うなら飼育方法をちゃんと心得てからのほうがいいと思うけど」
そう言って司は黙った。
けれども、本音は違ったのかもしれない。
翌日にはネットでオーダーしたであろう本が届いたのだ。
届いた本は、犬と猫の飼育方法が書かれたもの。
きっとそれらが司の選択肢にあがったのだろう。
考えてみれば、ウサギと鳥は初等部の飼育広場にいるけれど、犬や猫はいない。
自分が飼育したことのない動物を選択するあたりが司らしいと思えた。
その週の土曜日、「これ」と司に本を渡された。
本は二冊、犬と猫の本だ。
「俺はどっちでもいい。家にいて一緒にいる時間が長いのは母さんだから、母さんが決めたほうがいいと思う」
そうは言うものの、付箋の数が歴然としている。
司の関心は犬に向けられていた。
司が家を出てから涼さんがくつくつと笑いだす。
「司は素直なのか捻くれているのかわかりませんね」
「そうですか? 私はとても優しい子だと思います」
言いながら、付箋がたくさんつけられた本を開く。
基本的な飼育方法に加え、犬種や重量によって異なるそれぞれのポイントにも事細かに付箋やアンダーラインが引かれていた。
犬は大きさによってご飯の量も違えば必要とされる運動量も異なるらしい。そして、大きな犬になればなるほどリードを引く強さも強くなる。
それらを司が考慮した結果、小型犬がいいのではないか、という問いかけが余白部分に書きこまれていた。
「ふふ……」
「なんですか?」
「やっぱり優しい子です。ただ、少し不器用なだけ……」
私は涼さんに開いた本を渡す。
「……朝は無理だけど、夕方の散歩は俺が行く……?」
「えぇ。ほかにも……」
そのページの下の方を指差すと、涼さんは司の書きこんだものを読んで目を細めた。
「そうですね。どうにも不器用なところが玉に瑕ですが」
「でもきっと……そんな不器用な司に気づいてくれる子もいるはずです」
「だといいのですが、なかなかハードルが高いようにも思えます。……真白さん、今日は出かけましょうか」
「どちらへ?」
「ペットショップへ」
涼さんはにこりと笑んだ。
「嬉しいですっ!」
「朝食の片付けは私が引き受けましょう。真白さんは出かける支度をしてきてください」