ショコラ SideStory

その隙にカウンターから彼女の隣の席へと移る。

ここまで機嫌を直してからじゃないと、彼女は触らせてもくれない。


「ここ、ついてる」

「ん」


唇の脇のクリームをなめ取り、そのまま深いキスをする。

やっぱり若いもんみたいにいちゃついてるか。

さっきのマサの一言に、反論できない自分に気づいて笑ってしまう。


体を離すと、魅惑的に微笑む康子さん。
触れる距離に毎日彼女が居るってのは何て幸せなんだろう。


「隆二くんのほうはいいことあったの?」

「いや? いつも通りだけど」

「でも機嫌良さそう」

「たまには冷やかされるのもいいもんだね、って話だよ。さ、片付けて帰ろうか」


店の照明を落として、二人で店を出る。

カラカラカラン。鍵をかけるときの鈴の音は、どこか胸をくすぐるようで。

それを彼女と聞けることがものすごく嬉しい。


「明日も頑張りましょうね」

「そうだな。試作品も早速作ろうか」

「スイカジュースね。期待しないで待ってる」

「言ったな。見てろよ」


二人で歩く帰り道は、穏やかな幸せに満ちている。







【fin.】


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