ショコラ SideStory
「それより、いい匂いだね。詩子さん」
「え? ああ。後はアイシングするだけ。……ってもそれが問題なんだけどね」
「図案できてるの? 見せてよ」
「うん。こんなの」
今回モチーフにしたのは童話。
シンデレラのガラスの靴とか、王冠とか、かぼちゃの馬車とか。
そのほかにメッセージ書き込み用の大きなプレート。
ノートにペンで描く分には上手にかけたと思うけど、これを果たしてアイシングで描けるのかしらあたし……。
「可愛いね。すごいなぁ」
「うん。でもこれをアイシングでかくのは難しいのよ」
「頑張って」
「うん」
彼を助ける前にまず自分をちゃんとしなきゃ。
気合を入れなおして、再びキッチンに向かう。
まずは一番簡単なガラスの靴。
クッキーで形は作ってあるから、それを埋めるように白色アイシングをぬって、銀色のアザランをつけていく。
「うん。いいかな。ちょっと均一じゃないけど」
続いて王冠。こっちは結構大変。模様自体を描いていかなきゃいけないし……。
「ああっ」
力を入れすぎたのか、一気にぐにょって出てしまう。
「駄目だ、失敗」
もう一度やろう。
このために同じ形のものを何個も作ったんだもん。