ショコラ SideStory

だけど、今度は最後の仕上げのところで失敗。
やっぱりうまくいかない。

だってそうよ。
調理学校の時だって、こういう繊細な作業はいつだってドンケツだったもん。

二回失敗して、三回目でようやく成功。
思わず安堵の溜息が出ちゃう。


次はプレートに文字書きだ。

これが一番大変だし、一番注文されると予想されるものだ。

まずは【いつもありがとう】と言う文字を書いてみよう。

丁寧にって思えば思うほど、指先が震えてくる。


「ああっ」


そこまで綺麗に引けていた線が、カーブの辺りで凄く太くなってしまった。

これじゃ駄目だ。もう一回。

また失敗、負けるもんか。もう一度。


もう一回、もう……。


何度も続けても、【あ】のところで失敗しちゃう。


「ん、もうっ」


イライラが言葉に出る。

悔しい。どうしてあたしはこんなに不器用なんだろう。
思い描くものはちゃんとあるのに、あたしの手でそれを生み出せない。

何度やっても潰れてしまう文字。
もうクッキーはラスト一個。
次を間違えたら、今度はクッキー生地から作りなおしだ。

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