ショコラ SideStory
その間、宗司さんは根気強くあたしの傍でアドバイスをくれていた。
恥ずかしくて嫌になって投げ出したくなっても、隣に宗司さんがいる間は止められない。
恋人と言うよりは先生のような表情で何度も励ましてくれる彼は、どっしりとした安定感があって。
いつしか、宗司さんがいるだけで安心できるような気分になる。
「出来た!」
綺麗に書かれた【いつもありがとう】の文字。そして周りを飾るレース模様。繊細な絵柄も潰さずに書けた。
これなら、親父に自信もって見せれる。
「ありがとう、宗司さんのお陰よ。って、あれ?」
いつの間にか視線の先に宗司さんがいない。
「こっち」
声の聞こえてくる下方向に顔を向けると、宗司さんがへたり込んでいた。
「どうしたの?」
「や、安心したらなんか力抜けた」
情けない顔で笑うその姿は、もういつものヘタレな宗司さんだ。
「こんなとこでへばらないでよ。ほら、宗司さんが一番に味見して?」
「うん」
クッキーを一つ宗司さんの口元へと差し出す。そして彼が食べ始めたところで、まだ表に飛び出しているクッキーへに噛み付いた。