ショコラ SideStory
「え? んん……詩子さ……」
そのまま唇を重ねると、宗司さんは手をバタバタさせる。
女がこれだけ積極的に来てる時は、もっと強引に来てもらっていいのですけども。
あたしが男だったらキューっと抱きしめてそのままベッドに押し倒すとこだけどな。
でもやっぱり宗司さんは宗司さんなので、あたしは体を離してにっこり笑う。
「ありがと、宗司さん」
「や、あの。うん。俺こそごちそうさま……」
「あはは、何言ってんのよ」
「だって。詩子さんからキスしてくるなんて」
「そういう気分だったのよ」
だけど、この問答ですっかりムードは吹き飛んだけどもね。
「さて、片付けるか」
「俺手伝うよ」
「うん、ありがとう」
二人で並んで洗い物をしながら、あたしは彼に告げる。
「宗司さんみたいな先生に教えられたら、粘り強い子になるのかもね」
「え? そう」
「うん。先生の方にあんな風に頑張られたら、こっちだって投げ出すわけにいかないもん」
「そっかぁ」
彼が嬉しそうに笑うから、あたしまで嬉しくなってくる。
あなたはやっぱり誰かに教えることが好きなんだ。
誰かのために動くことが好きだなんて、なかなか無いいいとこじゃないの。