ショコラ SideStory
「どこ行くんだ」
「父さんに報告する必要性がわからない」
「俺は保護者だぞ?」
「あたしは成人女性です。だから保護者責任は必要ないのよ」
「くっ、じゃあ、宗司の方に聞く!」
「オーナーの権限振り回すのはやめて!」
結局いつもの喧嘩腰の会話。
マサも居なきゃ誰も合いの手を入れてくれないから、全然止まんないわ。
「とにかく! あたしはあたしの義務を果たしたいだけよ。店が汚くて困るのは親父だってそうでしょ。今から一時間、あたしに厨房を譲りなさい!」
勢い良く親父の背中を押して、厨房から追い出す。
「詩子ー! 作業中の生地、クッキー生地だから冷蔵庫で寝かせておいてくれ!」
「そんなこと言われなくても分かってるわよ。どっか散歩でも行ってきて! じゃあね」
なおも涙混じりの声が店の方からするけど、知ったこっちゃないわ。
さっさと掃除してしまおう。