ショコラ SideStory

マサくんには大人しそうな彼女がいたし、きっと詩子さんは彼の好みでは無いのだろう。
そう自分に言い聞かせつつ、詩子さんを嫌う男がいるとも思えないから心中は穏やかでない。

美人なのにすれてなくて、一生懸命で元気一杯。一緒にいるとどこまでも前向きになれるようなそんな彼女。
彼女がどうして俺なんかを選んでくれたのか、未だによく分からない。


「隣座るわよ」


休憩中になるからか、エプロンを外した彼女が、まだ湯気のでているビーフカツサンドを持ってやってきた。


「どうぞ」

「宗司さんはなんかおかわりする?」

「そうだね。デザートにフラッペをもらおうかな。小さいサイズで」

「いいわよ。待ってて」

「あ、でも詩子さん、冷めちゃうから食べなよ」

「ダイジョーブ!」


せっかく隣に来てくれたのに、彼女の手を煩わすようなものを注文するなんて俺は馬鹿か。
どうしていつもこうなんだろう。俺は要領が悪くて、いつも周りを困らせてしまう。


「はーい、お待たせ」


詩子さんは笑顔で持ってきてくれるけど。
代わりに彼女のコーヒーとサンドは冷房風に冷やされてしまっている。


「ありがとう。ごめんね」

「なにが?」


にっこり笑う彼女に、笑顔で「なんでもないよ」と答える。


詩子さん。
俺は君をちゃんと幸せに出来るような男なのかな。



< 183 / 432 >

この作品をシェア

pagetop