ショコラ SideStory
マサくんには大人しそうな彼女がいたし、きっと詩子さんは彼の好みでは無いのだろう。
そう自分に言い聞かせつつ、詩子さんを嫌う男がいるとも思えないから心中は穏やかでない。
美人なのにすれてなくて、一生懸命で元気一杯。一緒にいるとどこまでも前向きになれるようなそんな彼女。
彼女がどうして俺なんかを選んでくれたのか、未だによく分からない。
「隣座るわよ」
休憩中になるからか、エプロンを外した彼女が、まだ湯気のでているビーフカツサンドを持ってやってきた。
「どうぞ」
「宗司さんはなんかおかわりする?」
「そうだね。デザートにフラッペをもらおうかな。小さいサイズで」
「いいわよ。待ってて」
「あ、でも詩子さん、冷めちゃうから食べなよ」
「ダイジョーブ!」
せっかく隣に来てくれたのに、彼女の手を煩わすようなものを注文するなんて俺は馬鹿か。
どうしていつもこうなんだろう。俺は要領が悪くて、いつも周りを困らせてしまう。
「はーい、お待たせ」
詩子さんは笑顔で持ってきてくれるけど。
代わりに彼女のコーヒーとサンドは冷房風に冷やされてしまっている。
「ありがとう。ごめんね」
「なにが?」
にっこり笑う彼女に、笑顔で「なんでもないよ」と答える。
詩子さん。
俺は君をちゃんと幸せに出来るような男なのかな。