ショコラ SideStory

 今日はあなたがお休みだから、仕事を早めに切り上げてきたのに。

玄関ドアを開けた途端、エプロン姿の隆二くんを見て呆気にとられる。

「お帰り、康子さん」

彼の手にあるのは、泡立て機とボール。テーブルには数種類のクリーム。
なんなの、これは。

「何種類か作ってみたんだけど、味見してくれない?」

「はぁ?」

軽く睨んでみるも、彼の視線はクリームに注がれてる。

「今日は休みじゃなかったの? なんでお菓子作りしてる訳?」

「仕事の時は言われた作業しか出来ないじゃないか。色々研究するのは休みの日じゃないと」

「あっそ」

隆二くんはパティシエさん。
お菓子作りが好きなのは結構だけど、休みの日までってどうなの。

やや不貞腐れた様子で彼の前に座ると、にこにこしながらスプーンが近付いてくる。

「ホラ康子さん。一つ目」

「んー」

食べさせてくれるのか。
それはちょっと嬉しいけど。
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