ショコラ SideStory
厨房のステンレス製の作業台を拭いていると、何やら小さなメモが見つかった。
「何よこれ」
白い紙を埋め尽くすように書かれた文字とお花のイラスト。
赤字で【絶対!】と書かれた傍には、アイシングと書いてある。
アイシングクッキーを作るつもりなのかしら。
花型のクッキーを飾りつけするのかな。
そうか。販売もするようになったからこんなのも売れるのね?
いいなぁ。花型だけじゃなくて動物とかも可愛いんじゃない?
子供にウケそう。
メッセージとかいれても素敵よね。なかなかいいもん考えてんじゃん。
ついつい想いを馳せていると、時計は十時五分前。
「いけない!」
掃除道具を慌てて片付けると、いつの間に来ていたのかお店のカウンターには宗司さん。
「何よ、来てたの? 声かけてくれればいいのに」
「あはは。何か夢中になってたみたいだから。マスターは?」
「そろそろ帰ってくると思うけど。……あたし、ちょっと顔とか髪とか直してくるから待ってて」
そう言って大きなカバンと鍵を持って二階に直行。