ショコラ SideStory

「学校で有名なの? ショコラのクッキー」

「うん。クッキーだけなら高くないしね。アイシングもラッピングもカワイイしー。友達の誕生日とかによく買う。おねーちゃんたちは、告白に使うらしいよ」

「へぇ」


なんでも考えるもんだな、女の子って。
普段容赦なく生意気な彼女たちも、こうしてキャピキャピしているときはなんだかカワイイ。


「ヤキモチ焼かれたら困るから、ちゃんと彼女さんに頼んだんだから。あたしたちって偉いでしょ。先生」

「詩子さんはヤキモチ焼いたりしないよ」

「そんなこと無いよ。心配そうに『宗司さんって人気あるの?』って聞いてたよー。愛されてんじゃーん」

「はは。まあね」

「きゃー、平気でのろけたー」


キャピキャピ三重奏はとどまるところを知らない。いつもなら照れくさくて話を逸らしてしまうところだけど。


「うん。世界一の彼女だから」

「……きゃー!」


サラリと言い放ったら、逆に彼女たちのほうが赤面して騒ぎ出した。


俺はもう迷わない。
彼女の為に自分が強くなるのは、自分の為にと思うより簡単だ。


「さあ、授業にするよ。今日はまずこのプリントをやってみて、躓いたところを教えてくれるかな」


こんな清々しい気分になったのは久しぶりだ。

この先いろんな困難があっても、きっともう同じことでは悩まないだろう。


『俺に詩子さんをください』


そう遠くない未来に、それを叶えるために。
俺はもう努力を惜しまない。





【fin.】



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