ショコラ SideStory
いざ自分が落ち着くと人のことが気になるっていうのは、年のせいなのかしら。
お節介おばさんとか、よく言うわよね。
年を取ったなんて考えたくないけど、今の私の現状は、まさにそのお節介おばさんだ。
「で、どうなってるの?」
「ちゃんと付き合ってますよ?」
「もうそろそろ一年になるんでしょ?」
「ええ、お盆前に付き合い始めたのでぇ」
トロンとした目つきで、森宮ちゃんは綺麗なルビー色の液体の入ったグラスを傾ける。
カシスなんとか言ったかな。私はこれ、クスリみたいな味に感じて苦手なんだけど。
今日の森宮ちゃんのマニキュアの色はピンクで、ルビーをバックにするとなんだか映える。
「森宮ちゃん、いくつになった」
「三十三……でも、今月の三十日でも一つ増えちゃいますぅ」
ろれつが回らなくなってきているから、本音を聞き出すにはそろそろだろう。
私は、自分の手元の梅酒ロックを一気に飲み干し勢いをつける。
「結婚しないの?」
「あー……。したいですねぇ、でも、こればっかりは自分だけしたくても」
「強硬手段もアリかと思うけど」
「それ、康子さんじゃないですか。うふふ」
森宮ちゃんは、爆笑して私の背中をバシバシ叩く。
ちょっと痛いってば。年上のことは大事にしなさいよ。
しかし、森宮ちゃんの手の力はやがて弱くなり、最後に「……はあ」と小さな溜息を漏らした。