ショコラ SideStory

もはや相談に乗るのも面倒くさい。
こんなにグズグズしているから今の今まで独身なんだ。

仕事に関しては尊敬しているけれど、恋愛方面に関してはホント情けない。


「結局のとこ、香坂さんは結婚したいんでしょ?」

「もちろんだ」

「じゃあそれで十分じゃないですか。プロポーズする原動力としては」

「ん?」

「所詮プロポーズなんて提案に過ぎないってことですよ。相手の反応もわからないのに、そんなに悩んだって仕方ないでしょう。打ち明けてみて初めて物事が動き出すんですよ」


俺の言葉に、香坂さんは神妙に頷く。
しかしまだ煮え切らないのか、目を右往左往させている。


「しかし……だが」

「今度の休みいつですか」

「来週の火曜……」

「じゃそこで、四人で食事しましょう。康子さんには俺から伝えておきます。森宮さんにも、康子さんから伝えてもらいますから。今度こそ遅れないでくださいよ」

「う」

「店は後でメールします。じゃ、俺忙しいんで」

「ちょ、ま、相本!」


流石にこれ以上付き合っていられない。
俺は早々にその場を立ち去り、厨房へ逃げ込んだ。


「……香坂さん、もしかしてコーヒーにタバスコ入れちゃったんですか? 新しいの入れましょうか」


うなだれてるであろう香坂さんに、憐れむようにかけられた詩子の声に、俺は密かに吹き出した。


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