ショコラ SideStory
「……なによ」
「いえ、やっぱり康子さんはいいなぁって思って」
「何が」
「私もそういう風なら、もっと愛されたのかもしれない」
ファイルをギュッと握って苦笑いする森宮ちゃんは、ものすごく心細そうな顔をしていて。
……重症なんじゃない?
彼女もここまで思いつめさせるなんて、男としていけてないわよ香坂くん。
「……信じることよ」
「え?」
「もっと信じなさい。少しくらい羽目外したって嫌われたりしないわ。ちょっと恋愛に臆病になってるわよ、森宮ちゃん」
「……はい」
まだ元気が足りないな。
「とりあえず、その手に持ってる仕事の進捗を教えて」
「あ、はい。これは……」
仕事の話になると少しは元気が出てくるみたいで、しゃきっとした顔になって話し始めた。
「うん。さすが。よく出来てるわ、森宮ちゃん」
だから元気出して。
言わなくても伝わったのか、森宮ちゃんは自分を奮い立たせるように笑った。