ショコラ SideStory
** **


 康子さんは帰ってくるなり寝室に入り、鞄を放り投げるとベッドに倒れ込んだ。


「あー疲れた。ねぇ暑いわ。エアコンつけて」

「ハイハイ。メシは? 食べたのか?」

「ええ。詩子にはちゃんと電話しておいたわよ」


それは知ってる。俺が帰った時には台所は綺麗に片付けられていた。
「俺のメシは?」という問いかけには、いつものごとく「親父本職でしょ」っていう放置発言が返ってきただけだった。

仕方なくそれからパスタを茹でたので、実は康子さんの分もあるのだが。
まあいいか、明日の朝食に回そう。

ベッドに突っ伏したままの康子さんは、「んー」とか「あー」とか言葉にならないうめき声を発する。


「スカートシワになるんじゃないのか?」

「じゃあ脱がせて。そしてハンガーにかけて」


返ってきたのはまるで女王様のような返事。
スカートから伸びた細い足を無防備に晒して力尽きてると、こっちも襲いたくなるんだけどな。

彼女の耳の脇に手をついて、上から覆いかぶさるような体勢で彼女を見つめる。俺の女王様はたじろぐこともなく俺を見返した。


「ホントに脱がすよ」

「んー」

「スカートだけじゃなく、ブラウスも脱がすけど?」

「んー、好きにして」

< 213 / 432 >

この作品をシェア

pagetop