ショコラ SideStory

** **

 お昼休みの給湯室は本日に限り尋問スペースへと変わっている。


「で、どうなったの。教えなさいよ」


 森宮ちゃんは若干二日酔いらしく、「頭が痛くなりそうなので」といつもは結っている髪も下ろしている。それでも問い詰めれば照れたように笑うので、きっとうまく行ったのだろう。


「えっとですね。一応、プロポーズしてもらって。誕生日より前に挨拶にも来てくれるって」


予想よりも具体的に話が進んでいることに驚いて、思わずマジマジと見返してしまう。


「意外。決めたら動きは速いのね」

「ずっと色々考えていてくれたみたいです」


嬉しそうに頬を染める森宮ちゃんを見て、私はホッとした気持ちになった。


「で、なんて言われたの。つか、あの場で言ったの?」

「え? そんなの聞きます?」

「聞きます。気になるじゃない。いいじゃない教えてよ。私、心配してたんだから」

「え、っとぉ」


顔を赤くして、目を彷徨わせる森宮ちゃん。


「ここじゃ、言いづらい……んですけど」

「何よ。じゃあ今日も飲みに行く?」

「今日は夜会議があるからダメです」

「じゃあこっち」


仕方ないので場所を変える。
まあ確かに、給湯室なんて穴だらけだものね。
二人連れ立って、空いている会議室に入る。

すました顔してれば、誰も不審には思わないもんよ。


< 225 / 432 >

この作品をシェア

pagetop