ショコラ SideStory
「はい、ここなら誰にも聞かれないわ?」
話しやすい状況を整えてみると、森宮ちゃんは書類で口元を隠しながらボソリと呟く。
「……もう。だから、内緒ですよ? ちょっと実力行使にでたんです」
「へぇ、どんな?」
実力行使ってなんだろう。
自分からプロポーズしたってこと?
「だ、だから。あの後彼の部屋に行って」
「うん」
「ひ、避妊具を捨てて。……これでも私を抱く気がありますかって」
「……言ったの?」
「酔いの勢いって怖いですねぇ」
顔を真っ赤にして、森宮ちゃんは続ける。
いや、それかなり凄いけど。
悪いけど、酔ってても出来ないかもしれない、私。
「そうしたら香坂さん、『子供が欲しいなら、いつでもプロポーズしたのに』って。……私も悪かったんですね。もっと早く自分の理想の人生設計を伝えれば良かった」
「お互い様ってこと?」
「はい」
「……はぁ。そうなの」
その行動をするりと受け入れた香坂くんにも驚きだ。
意外と度量が深いというわけ?
よく分かんないけど。
二人がお似合いみたいってことはよくわかったわ。
未だ照れまくる森宮ちゃんの肩をポンと叩く。
「お幸せにね?」
「はい! 結婚式には康子さんもでてくださいね」
「そうね。キレないように努力するわ」
二人の人生最良の日を、早く見れるよう祈ってる。
【fin.】