ショコラ SideStory
その後、ケーキを堪能した俺達はロイヤルホテルの前で別れる。
少し時間を潰して、それから和美を迎えに行こう。
彼女のためのケーキ。
それを作るには、今の俺は彼女から目をそらしすぎている。
腹をくくって、彼女の話を何でも聞こう。
劣等感に悩まされても、嫉妬心にあおられても、本当の彼女を見なければ作れない。
和美。
俺は君を笑顔にさせるケーキを作りたい。
それが俺が作りたいただひとつのケーキだ。
吹っ切れたような気持ちで、彼女の大学まで向かう。
ずっと立ち入るのを恐れていた、彼女が一日の大半を過ごす場所だ。
最寄り駅で下りて歩くと、俺と同じくらいに見える年頃の子たちがたくさんいた。
皆きゃあきゃあ楽しそうに歓声を上げ、軽装で沢山の女の子を引き連れている男もいる。
この学生特有の軽さみたいなものも俺は苦手だった。
和美の元カレもこんなタイプだったし。
だけど苦手だからと目をそらすのはやめよう。
和美を理解するのに、それが必要なことなら。
校門前で行き交う人の視線を感じながら、辺りを眺める。
行き交う人の大半が二十歳前後の学生ばかりというのは、街の中とは空気が違うものなんだな。
気安い仲間同士が集うからなのか、賑やかで弾むようだ。
弾むといえば炭酸だな。ソーダのゼリーってのも面白いかも。でもそれだと夏のものだ。
それに、それでは和美のためのスイーツじゃない。