ショコラ SideStory
客もはけて、『ショコラ』もそろそろ閉店準備だ。
でも手伝う気力がわかない。
ただぼんやりと窓の外を見つめる。
何やってるのよ宗司さん、待ってるのに。
マサがテーブルを拭きにやってきて、あたしを邪魔そうに追いやった。
ハイハイ、わかりましたよ。
仕方なくカウンターに移動し、再び突っ伏す。
テーブルのひんやり感が悲しいような心地良いような感じだ。
「マサ、もう上がっていいぞ」
「はい。じゃあお先でーす。またな、詩子」
「ハイハイ、おつかれー」
マサが余りケーキを入れた箱を手に帰っていく。
あっちもデートかしら。
あたしとマサ、どっちが意中の人に先に会えるのやら。
そわそわしながら待っていると、やがて外階段の音が響いてきた。
あたしはうつ伏せになっていた上半身を勢い良く起こし、窓の外を覗いた。
窓の外から見えたのは宗司さんだけじゃなかった。
宗司さんと小学校の低学年くらいの小さな女の子、そしてまだ若い感じの髪の長いスラっとしたお母さんが並んでいた。
まるで家族みたいに見えてしまって一瞬激しく動揺したものの、きっと新しい生徒さんが入ったのねと思い直した。
でもこの時間って小学生の時間じゃなかったはずなんだけどな。