ショコラ SideStory
“結婚しようよ”
勢いで言ったあたしのプロポーズに、彼は言葉もなく固まっている。
時間は夜の九時を過ぎている。
生徒さんが帰っていった後に暖房を切ってしまったのか、時が立つごとに冷気が体の周りに忍び寄る。
ちょっと反応してよ。
恥ずかしくなっちゃう……ってか。
あたしってば、また先のことを考えずに口走ってしまったわけだけど。
「う、た、こ、さん」
口をパクパクさせながら、息とともに一音ずつ吐き出す宗司さん。
落ち着いて。
壊れた機械みたいになってる。
「返事」
あたしはといえば、恥ずかしいからついついぶっきらぼうな口調で。
ああもう。
あたしってば何様なのよ。自分で自分が嫌になる。
「ちょ、待ってよ。俺、心の準備が……」
顔を真っ赤にして照れる宗司さん。
乙女かよ。
そんなのあたしだってできてないわよ。
でも放っておけなかったんだもん、仕方ないじゃない!
そんな戸惑ってないで、喜んでよ。
それともあたしもあなたを困らせているだけなの?
ああダメ。
なんかイライラしてきたわ。