ショコラ SideStory
「あたしと結婚したいの、したくないの?」
あたしの口調は完全なる怒り口調になっていて、宗司さんがたじろぐのが分かる。
「したいに決まってるよ。でも俺はまだ」
ちらり、と宗司さんが見つめたのは床。
おそらく気にしているのはそこより更に下にいるはずの親父。
「まだ何よ」
「マスターに認めてもらえる自信がない」
知るか。
自信なんて、持とうとしなきゃいつまでたっても持てるわけないわよ。
「じゃあ、どうするの。宗司さんの自信っていつつくの」
「頑張るから、もう少し待ってよ」
「もう少しっていつよ」
今日の宗司さんは弱気すぎる。
対して、今日のあたしは稲垣さんの事もあって余裕がなさすぎるのだ。
「頑張るって体の良い言葉よね。でもね、ただなんとなく『頑張る』って言ってるだけじゃ何の意味もないでしょう。あたしは今のあなたと一緒にいたいって言ってるの。今がいいの。それが嫌なら別れて」
「ええっ」
宗司さんの顔が一気に青ざめる。
ほら、あたしってばまた勢いで凄いこと言っちゃった。
でも、言ったもんは仕方がないわ。
ここはもう推し進めてしまうしかあるまい。