ショコラ SideStory
「一週間しか待たない。それまでに返事して」
「う、詩子さん!」
逃げるように部屋を出て、内階段から一階にかけ下りた。
心臓はもっと長距離を走ったみたいにバクバクしてる。
おかしいな。
あたし、宗司さんを守りたいって思っていたはずだったのに。
どうしてあたしが宗司さんを追い詰める流れになっているんだろう。
「宗司、どうだった?」
一階に戻ったあたしに、親父が作業の手を止めることなく問いかける。
どうやら作っているのはチョコレートケーキの試作品らしい。
お店の方はもう閉めたのか、いつの間にかマサはいなくなっていた。
答え……づらいな。
なんて言えばいいのよ。
「ああ、まあ、そうね」
「たまには宗司と食事でも行ってきたらどうだ」
親父にしては寛大な一言。
珍しいな。
こんなチャンスを棒に振らなきゃならないとか、どんな厄日なんだ。
「いや、その。うーん。とりあえず帰るわ」
「詩子? なんかあったのか?」
「別に!」
エプロンを丸めて鞄に入れて、逃げるように店を飛び出す。
今は誰も聞かないで。
あたしも自分のしたことを上手く説明できない。