ショコラ SideStory

「本当よ。昨日、勢いで言っちゃったの」

「勢いでだろ? 冷静になった今はどうなんだ」

「変わらないわ。宗司さんと一緒いたい」


事も無げに言うあたしに、親父はため息を三連発。


「よく考えろよ。コイツの仕事展望だって怪しいもんだぞ。ほら見ろ、この五ページ目。半年後には塾生五十人ってとこ。なんの根拠があって書いてるんだよ、これ」

「一応、今年一年の増加ベースに沿って書いてます。四月に学校前でビラ配りして、多少上乗せ出来る計算で試算していますが」

「でも希望的観測だろうが」

「父さん」


あたしはクリームでベタベタになった調理台をバンと叩く。


「父さんだってちょこちょこ仕事辞めたり、いきなりこの店立ち上げたりしたよね。ここが軌道に乗ったのはどうしてだと思ってる?」

「俺の腕……と、詩子の接客だ」

「でしょ。つまり、あたしはそういう一か八かみたいなやつに強いのよ」

「ほう?」

「だから、あたしがついてれば、宗司さんだって大丈夫」


どうよ。
ここ一番の強がりと度胸はあたしの持ち味。

誰がなんと言ったって、あなたを守れるのはあたしだけ。



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