ショコラ SideStory
宗司さんと結婚したいといえば、一番に味方してくれるのが母さんだと思っていた。
しかし今、目の前にいるあたしの母親は、見たことのないような冷静な顔で、あたしと宗司さんを見すえている。
本日は十一月も終わりの日曜日。
プロポーズ騒動が収まったあたしたちは、相談した結果、まずは改めて親父と母さんに、その後、年末に宗司さんのご両親の元にご挨拶に行くことにした。
それで今日、宗司さんは改めて親父と母さんに挨拶するために、仕事を終えてから家に来てくれたのだけど。
「甘いわね」
艶のある唇が冷徹に言い放つ。
そうですか。
反射で答えそうになって口ごもる。こんな反発心丸出しでそんなこと言ったら何言われるかわかったもんじゃない。
ちょっとどういうこと。
なんで母さん、こんなに不機嫌なの?
あたしたち、別に出来ちゃった婚でもないわよ。
あなた達より健全でしょうが。
「あのね、母さん」
「生活するってお金かかるのよ? 解ってる? こんな勢いで決めた結婚で本当に大丈夫なの?」
「勢いで決めた人に言われたくないわよ」
「あら。私と隆二くんの時はいいのよ。私に経済力があったんだもの。腐っても上場企業の社員よ。でも、あなた達二人は違うわよね。どちらも自営業。しかもどっちも儲かってるとは言いがたいわ。違う?」
私の感情がヒートアップしていきそうなタイミングで絶妙に冷静な意見を入れてくる。
やめてよ、理詰めで来られると反論のしようがないじゃない。
それに理論ではそうでも、結婚したいのは感情なのよ。
貧乏だって別にいいじゃないの、一緒にいたいだけなんだから。