ショコラ SideStory



そしてお正月。
明けましておめでとうございます、と挨拶をした後、あたしと宗司さんは再び母さんの前で正座している。


「これを見てください」


と宗司さんが差し出したのは、やっぱり以前のようなレポート用紙。
違うのは、前よりも厚みが薄くなっているところ。

母さんは、顎に手を当ててそれを見分した。


「……宗司くん、経営の勉強でもした?」

「本で読んだだけですけど」

「募集生徒を敢えて限定したのね。【勉強の楽しみ方教えます】っていうこのコンセプトは凄くいい。教師が宗司くん一人な以上は手広くすることに意味は無いわ。あなたが得意とする生徒を呼び込んだほうが効果的」

「ええ。でもいつまでも俺一人ではやっぱり無理が出てくるので、四月に向けて教師を補充するつもりです。若い方ではなくて、定年退職なさったあたりのシニア層の先生をお願いしようかと思っています」

「……経験を買うってことね」

「はい。長年の教師経験で得られたノウハウをフィードバックしてもらえれば俺の経験にもなりますし」

「そうね。あと、もう一つ評価できるのはこの計画書。前よりコンパクトになったわね。プレゼンの基本よ。ダラダラと要点がまとまらない文章は読む気にならないもの。まあ合格とは今の時点では言えないけど」


母さんはそう言うと、チラリとあたしを見た。

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