ショコラ SideStory
「あたしがどれだけ拗ねて、暴れても、きっと最後はこうやって、宗司さんに助けられる。諦めそうになっても二人で励まし合える。
あたし、宗司さんがいなかったら、きっとアイシングクッキーはまだ作れなかったと思う。諦めずに済んだのは、彼のおかげなの。
宗司さんはあたしを、強くさせてくれる人で、だからあたしは彼とずっと一緒にいたいの。
……ねぇ、母さん。こんな甘ったるくて夢見てるようなお菓子の家をつくろうって思えるくらい、宗司さんはあたしに夢みたいな幸せをくれたのよ」
ちらり、と彼を見る。照れたように顔を赤くして、拳を正座した膝に置いている。
いつの間にか、もう少し背中を押して欲しいと思うときには、彼の姿を探すようになった。
「母さん。あたしはまだ半人前かな。あたしが結婚したいなんて言うのは、子供の戯言だってそう思う?
でもあたしは、宗司さんがいるから頑張れるって思ってる。あたしがめげそうになっても、諦めるなって言ってくれる人だから。あたしは、裕福じゃなくてもいいの。ただ、頑張るのを傍で見ていて欲しいだけ。それを叶えてくれるのは、宗司さんだけだって思うから」
それは、あたしを放っておいた母さんに言うのは酷なのかも知れない。
暗に責めていると言われたら否定はできない。
だけど、この気持をちゃんと伝えなきゃ、母さんを頷かせることは出来ないって思うから。
母さんの眉が緊張が抜けたみたいにフッと緩んだ。
そして、居住まいを正して宗司さんに向かって頭を下げる。
「まだまだ子供みたいな娘ですけど、よろしくお願いします」
「康子さん、顔上げてください」
宗司さんに言われて、母さんはゆっくり面を上げたかと思うと私の方を向く。