ショコラ SideStory
「はいはい、余計な女もいて悪かったわね」
「ちょ、康子さんが余計だなんて一言も言ってないだろ」
「態度に出てたわ」
「違う! 俺は両方いるのが一番嬉しいんだ」
「あらそう。両手に花で良かったこと」
「もう、二人共やめてよ」
くだらない痴話げんかはやめてほしい。
ああもう、あたしがいないほうが二人の間はうまくいくんじゃないのかしら。
もう部屋に戻ろうかな、と立ち上がった。
「まて、詩子。仕事の話があるんだ。……香坂さんの結婚式で、プチギフトでクッキーを百袋作って欲しいんだと」
「プチギフトって?」
「ほら、よく最後に新郎新婦が参列者に配るやつがあるだろ。それをアイシングクッキーにしたいんだと」
「え? あたし? 親父が頼まれたんじゃないの?」
「でもクッキーはお前の担当だろ?」
だったら、引き受ける前にあたしにも判断させてよ。
結婚式のプチギフトなんて、そんな一大イベントで下手くそなもの出せないじゃない。
割れなんてあったら大変なことだから、個数だって一割は多めに作らなきゃいけないだろうし。
「あ、今回は俺も手伝うぞ。個数的に詩子一人じゃ無理だろう」
「うん。……で、式はいつなの?」
「二月よ。私も隆二くんも呼ばれてる」
香坂さんのお相手は、母さんの会社の後輩の森宮さんって言ってたっけ。
不思議な偶然もあるものだよねぇ。