ショコラ SideStory
*
そして、二日後。打ち合わせは営業時間終了後ということにしていたので、あたしはいつも上がる時間を過ぎても残っていた。
二十一時を少し過ぎたころ、息を切らせて森宮さんが店内に駆け込んでくる。
「どうもすみません、遅くなって」
約束していた時間を五分過ぎただけだ。
あたしも親父も特に気にしていなかったのに、彼女は平身低頭の構えを見せる。
「森宮さん、頭を上げて下さい。大丈夫ですよ。香坂さんもまだ来てませんし」
親父がとりなすように言って、ようやく頭を上げてくれる。
ダークブラウンの髪を後ろで結い上げた、清潔感のある美人という印象の森宮さんは、時間にもきっかりしているらしい。
「香坂さんは遅れると思ったので、私だけでも間に合わせたいって思って」
はあはあ息を切らしながら、そういう彼女に椅子を勧め、珈琲を出す。
「わあ、いい香り」
顔をほころばせた森宮さんに、親父は優しく笑いかけ、さり気なさを装おって尋ねた。
「康子さんはまだ仕事してる?」
「はい。今日は私が先に上がらせてもらいました。いつも康子さんにはお世話になりっぱなしです」
「そんなことないよ。康子さんだって森宮さんには助けられてるってよく言ってる」
社交辞令にも似たその会話を、あたしは黙って聞いていた。
というか、作った試作品に対してどんな評価が付けられるのかが気になって、落ち着いて会話に加われない。
そして、二日後。打ち合わせは営業時間終了後ということにしていたので、あたしはいつも上がる時間を過ぎても残っていた。
二十一時を少し過ぎたころ、息を切らせて森宮さんが店内に駆け込んでくる。
「どうもすみません、遅くなって」
約束していた時間を五分過ぎただけだ。
あたしも親父も特に気にしていなかったのに、彼女は平身低頭の構えを見せる。
「森宮さん、頭を上げて下さい。大丈夫ですよ。香坂さんもまだ来てませんし」
親父がとりなすように言って、ようやく頭を上げてくれる。
ダークブラウンの髪を後ろで結い上げた、清潔感のある美人という印象の森宮さんは、時間にもきっかりしているらしい。
「香坂さんは遅れると思ったので、私だけでも間に合わせたいって思って」
はあはあ息を切らしながら、そういう彼女に椅子を勧め、珈琲を出す。
「わあ、いい香り」
顔をほころばせた森宮さんに、親父は優しく笑いかけ、さり気なさを装おって尋ねた。
「康子さんはまだ仕事してる?」
「はい。今日は私が先に上がらせてもらいました。いつも康子さんにはお世話になりっぱなしです」
「そんなことないよ。康子さんだって森宮さんには助けられてるってよく言ってる」
社交辞令にも似たその会話を、あたしは黙って聞いていた。
というか、作った試作品に対してどんな評価が付けられるのかが気になって、落ち着いて会話に加われない。