ショコラ SideStory
誰にも邪魔されたくなかった。
離れても大丈夫なんだと頭ではわかっているけれど、寂しいことには変わりなくて、体に存在を刻み込むくらい彼を感じていたかった。
「……ん、あっ」
今日の宗司さんは激しい。いつもみたいにあたしを泳がせることはなく、自分の気持ちを訴えるようにキスの雨を降らせる。
この人も、感情が高ぶらせることがあるんだと思ったら、嬉しかった。
「あたしが好きなの、宗司さんだけよ」
汗だくでつながりながら、あたしは何度も口にする。
たくさんの人に告白されたことがある。でも、あたしが選んだのは人生で宗司さんただ一人だ。
口の悪さも思いつきで動くところも、全部ひっくるめてあたしでいいって言ってくれる人。
「一年で、帰ってこれる?」
「うん。頑張るわ」
「じゃあ、約束」
指を絡めあって、全身を重ねあって。
発情期の猫みたいに、甘い声を出し続けた。
「ん、……愛してる、詩子さん」
「……あたしもよ」
好きで好きで、自分と相手の境界線を無くしたいくらい欲しくて。
でも決して自分と同じじゃない彼でいて欲しくて。
『愛してる』って言葉は、こんな時に使うものなのかもしれない。
自分とは違う彼を、自分とつないでくれるように。
離れ離れになっても、頑張れる糧となるように。
「愛してる」
だから何度も、勝手に口からこぼれてしまうんだろう。